「まちとしょテラソ」の愛称で親しまれる小布施町立図書館は、長野電鉄小布施駅前にほど近い町立栗ガ丘小学校に近接して建っています。町役場や北斎ホールにも隣接し、町の交流センターとしても機能するよう計画されています。ワンルームの三角形平面と、それを包み込む山なりの滑らかな曲面屋根が特徴の建築です。
三角形の平面で真ん中が盛り上がったこの屋根は3次元曲面になります。その3次元曲面をどう仕上げるかがポイントでした。屋根面の最終的な仕上げの滑らかさを考えると、三角形を組み合わせて3次元曲面に追従させるより、屋根架構面全体に束を立て、中央から屋根の端部へ向けて3方向にそれぞれ平行に母屋を架け、野地板を張って下地をつくるほうがよさそうだと判断し、設計者の方に提案しました。
小屋組は直線材の組み合わせで曲面屋根をかたどり、野地板の弾力性を活かして屋根面全体に馴染ませて金属屋根を葺いています。直線材を用いながらも曲線を覆えるように、材長および天井の曲面形状を決めました。野地板の突き合わせ部分の角が出ないように削ったり、曲率の大きい部分は材を細かく分割して、滑らかな曲線を実現しました。
大屋根は外周部の柱と3本の樹木状の独立柱によって支えられています。
開架書架エリアの天井は、およそ5,000本のスギの角材を張っています。そのうち約6割をNCカッターでカーブ状に削り出し、残りは直線材のまま使用しています。小屋組に取り付けたコの字金具に角材を通して固定しています。
天井を覆うスギの角材は、天井仕上げの座標点から割り出して、部材1本ずつ正確に作画して製作し施工しました。特に外周部では天井面が水平となるため、曲率の大きなところが生まれるので、材をカーブ状に削って曲線材を製作し対応しました。
"どうすればこの形を実現できるのか?"
見せ所であり、最も苦労した点がこの曲面の屋根とルーバー天井でした。多くの関係者と議論を重ね、試行錯誤の上、ようやく完成しました。
今後も多くの皆さんに利用され親しまれる図書館であってほしいと思います。