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海沿いの豊かな自然環境の中に建つ、延床面積1,896.58m²、3階建ての大規模な週末住宅です。パノラマオーシャンビューを確保しつつ風を避ける中庭もあるドーナツ型の建物で、コンクリートの曲面壁に大小の楕円の開口を設ける設計です。その壁面の滑らかさを確保するためには高い施工精度が求められました。
円筒形に楕円形の開口がたくさん開く構造体のため、コンクリートの型枠づくりの手順を検討しました。そして①外型枠を立て、②楕円形開口部の位置を決めて外型枠に貼り付け、③開口を避けて配筋し、④内側の型枠を立て、⑤打設、の順としました。曲面壁を美しくつくるためには、できるだけ補修をしないことが大切なので、型枠は曲面の板を横使いにし、縦方向の継ぎ目を減らしました。
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ドーナツ型の建物であるため、コンクリートの構造体に開く楕円開口の寸法は外壁側と内壁側ですべて異なります。それぞれの展開図を作成し、型枠を製作しました。
また、曲面部の楕円サッシはコンクリートの打設後、ひとつひとつ実測してから製作しました。
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脱型後はコンクリート面を手で触って凹凸を確認し、さらに全面をパテ処理し、白色の塗装剤で下塗りしました。その段階でライトを当ててわずかな歪みをも見つけ出し、修正してから丁寧に仕上げていきました。
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海沿いのため、塩害防止にも配慮しています。外壁にクラック(ひび割れ)が入ると、そこから塩化物が入り込み、内部の鉄筋が錆びてしまって強度が保てなくなるため、コンクリートには膨張剤を添加し、クラックの入りやすい開口部の補強を確実に行いました。さらに塩害に強い高弾性アクリルゴム系塗料で仕上げました。
また、楕円の開口部に雨垂れの汚れが付かないように、開口ごとに水抜きパイプを設置しています。
とにかく曲線だらけの建物、それを具体的な施工図に表現するのにも苦労がありました。しかし、自分も含め職人もめったに出会うことのない建物、プロジェクトに関わった全員が、苦労しながらも楽しみながらつくり上げることができました。